「森盲天外に魅せられて――松山市の文化活動家・今岡弘さんインタビュー」

日時:二〇二四年一一月二三日
場所:ローズハウス 余戸店

 現在、松山市の市道余土一四二号にある「盲天外通り」は、余土中学校の前に位置し、市民に親しまれている通りです。「盲天外通り」という愛称の制定に貢献した今岡弘さんに、お話を伺いました。

(実際の盲天外通りの写真)

プロフィール

 今岡弘(いまおか ひろし)。愛媛県松山市在住。長年サラリーマンとして勤務し、定年退職後に森盲天外との運命的な出会いを経て、地域文化の振興に尽力してきた文化活動家。

森盲天外との出会い

 松山市生涯学習センターでの森盲天外の展示との出会いが、私の人生に大きな転機をもたらしました。それまでは歴史小説を読む程度で、本格的な歴史研究とは無縁の生活を送っていました。しかし、定年退職後に森盲天外の存在を知り、大変感動しました。それは運命的といっていいくらいの印象でした。この出会いを契機に、森盲天外に関する書籍や資料の独自収集・調査を開始しました。「森盲天外翁を偲ぶ会」を立ち上げ、その活動は「盲天外通り」の制定や「一粒米の会」へと発展していきました。

地域への想いと活動理念

 松山市や余土地区も、かつての農村から現代的な街へと変貌を遂げ、住宅や人口も増加しています。そうした発展の中で、地域の記憶は少しずつ薄れていく傾向にあります。私は、地域の歴史をたどる中で、地元のために情熱的に活動した先人たちの姿から学ぶべきものの大切さを痛感しました。「温故知新」の精神で、特に若い世代への精神の継 承を常に思い描いています。

「実践」の精神と今後の活動

 私が大切にしているのは「実践すること」です。これは森盲天外自身が体現した生き方に深く通じています。盲天外が理論や言葉だけでなく、理想を実践した「実践家」であったように、私も地道な活動をモットーにしてきました。

 現在も、様々な形で、松山市余土地区の歴史の再考に取り組み、地域の価値を掘り起こす活動を続けています。地元出身の文化人や偉大な先人たちの事績を調査・紹介する活動を通じて、今後も地域の誇りとなる歴史や文化の継承に尽力していきたいです。

「日曜貯金 集金袋」

盲天外は、村是の一つに「勤倹貯蓄」を掲げ、貯金を推奨した。毎週日曜日に小学校の児童を使いにし、各家を回らせ、村内から一〇銭以下の貯金を集めさせた(但し貯金は引き出し自由)。月曜日に、児童は通帳と金を教員に渡し、学校も通帳の管理等を協力した。盲天外は児童を訪れ、総額を報告し感謝を述べ、児童たちも喜んだという。こうして、学童に対しても「公共」「奉仕」の意識を培った。

「小作保護 積立 頭陀袋」

村是の一つ「小作保護」のため、村長自ら頭陀袋をさげ、盲目ながら家々を回り、地主から資金を募った。その資金をプールし、小作人が肥料を購入するための費用として貸し出した。当初は反対する人もあり苦労したが、やがて協力者も増え、結果的に、余土村の年貢米の収穫や品質向上に繋がり、小作と地主の協力が築き上げられたという。

「新渡戸稲造から贈られたシルクハット」

新渡戸と盲天外の交流をしのばせる品として、大切に保管されている。

今岡弘さんが盲天外を紹介されている
ホームページはこちら

【付記】
本研究は、科研費の助成金によって作成されました(JSPS科研費 22K00357)。
This work was supported by JSPS KAKENHI Grant Number 22K00357.

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