森盲天外著「一粒米」を読む③第4章~第6章まで(完)
『一粒米』は、失明の境涯に在る著者・森盲天外翁が口述されたものを筆録し、成稿された作品です。 自序に曰く、「書中の一字一字は、ほとんど苦心と困難の結晶にして、滴々の涙痕を残すものなり」とあり、また「前後の文章を繰り返して見ること能わざる悲しみの痕を留む」とも記されております。
本来、斯の如き作品は、原文のまま拝読し、その筆致に滲む痕跡を直に汲み取ることこそ、最も望ましき鑑賞の在り方です。 しかしながら、明治期の文語体は、現代の読者にとって理解の困難を伴う箇所も少なくありません。
本訳におきましては、原文の風韻を損なうことないよう細心の注意を払い、可能な限り削除を避けつつ訳出いたしました。 ただし、語彙の変遷や、仏教・儒教に基づく思想的背景の理解を要する部分につきましては、意訳をもって補いを試みております。